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最低賃金の引き上げと業務改善助成金

前回コラム:東京都最低賃金:31円引上げ、時間額1,072円の答申 (東京地方最低賃金審議会)と併せてご覧下さい。

 

会社が最低賃金の引上げに対応するため、よい方法はないか?

最低賃金及び賃金の引上げに向けた環境整備を図ることを目的とした「業務改善助成金」があります。
詳しくはHPをご覧ください! 業務改善助成金 リーフレット:令和4年度 業務改善助成金(通常コース)のご案内

業務改善助成金の趣旨

事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引上げた中小企業事業主が、生産性の向上、労働能率の増進に資する設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行った場合、その設備投資などに要した費用の一部を助成します。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)などを行った場合に、その費用の一部が助成されるものです。

【活用事例】
●POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
●リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
●顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
●専門家のコンサルティングによる業務フロー見直しによる顧客回転率の向上  など

機械設備やコンサルティングの他、人材育成・教育訓練も助成対象となります。
●外部講師による従業員向けの研修、導入機器の操作研修
●外部団体等が行う人材育成セミナー等の受講  など

業務改善助成金の概要

●支給対象となる「中小企業事業者」とは
次のAまたはBの要件を満たす企業が「中小企業事業者」に該当します。そして、申請する事業場は「事業場内最賃と地域別最賃の差額が 30 円以内」と「事業場規模 100 人以下」両方満たす必要があります。差額が 30 円を超える場合は申請できません。ただし、地域別最賃の改定によって差額が縮まり 30 円以下になった場合は、申請可能となります。

業 種 A 資本金または出資額 B 常時使用する労働者
小売業 小売業、飲食店など 5000万円以下 50人以下
サービス業 物品賃貸業、宿泊業、医療、福祉、複合サービス事業など 5000万円以下   100人以下
卸売業  卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業など 3億円以下  300人以下

※「小売業」「サービス業」「卸売業」「その他の業種」のうち、どの業種に該当するかについては、日本標準産業分類(総務省HPへリンク)及び交付要領をご参照ください。

●支給額
次の表に掲げる申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額が助成されます(千円未満端数切り捨て)。
なお、申請コースごとに、助成対象事業場、引上げ額、助成率、引き上げる労働者数、助成の上限額が定められていますので、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

(※1)10人以上の上限額区分は、以下の1.叉は2.のいずれかに該当する事業場が対象となります。
    1.賃金要件:事業場内最低賃金900円未満の事業場
    2.生産量要件:売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3ヶ月間の月平均値が前年又は前々年の同じ月に比べて、
      30%以上減少している事業者
(※2)対象は地域別最低賃金900円未満の地域のうち、事業場内最低賃金が900円未満の事業場です。(令和4年4月現在)
(※3)ここでいう「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指します。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。

●事業場内最低賃金の引き上げとは?
 ⅰ)全ての労働者を新しい事業場内最低賃金以上まで引き上げる必要があります。
 ⅱ)引き上げる労働者数に応じて助成上限額が変動します。(表2③)
 ⅲ)事業場内最低賃金の者以外にも申請コース額以上に引き上げた場合は引上げ人数にカウントします。

<例:事業場内最低賃金1,050円、30円コースの場合> 東京都最低賃金:1,041円(令和3年10月1日—令和4年9月30日)
大前提:全ての労働者の賃金を1,080円以上へ引き上げる必要があります。

労働者の詳細 引上げ前 引上げ後 引上人数の
カウント可否
注意点
Aさん 1,050円 1,080円 Aさんは事業場内最低賃金で勤務していますが、事業場内最低賃金は、雇入れ後3月以上の労働者を基準にする必要がありますのでご留意ください。
Bさん 1,070円 1,090円

全ての労働者の賃金を新事業場内最低賃金(1,080円)以上に引き上げる必要があります。
ただし、引上げ人数としては、申請コース額(30円)以上引き上げているCさんのみがカウントできます。

Cさん 1,070円 1,100円
Dさん 1,100円 1,130円 Dさんは既に新事業場内最低賃金より高いので、30円以上引き上げを実施してもカウントできません。


業務改善助成金の手続き

申請は企業単位ではなく、事業場(営業所、店舗等)単位となります。

業務改善助成金の手続きの流れ1.助成金交付申請書の提出
業務改善計画(設備投資などの実施計画)と賃金引上計画(事業場内最低賃金の引上計画)を記載した交付申請書(様式第1号)を作成し、都道府県労働局に提出する。
※原則として、二者以上の見積書が必要です(相見積)。その場合、価格が安い方を選定することとなります。

注1 : 交付申請書を都道府県労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合は、対象となりません。
注2 : 事業場内最低賃金の引上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日までであれば、いつ実施しても構いません。
注3 : 設備投資等の実施及び助成対象経費の支出は、交付決定後に行う必要があります。

2.助成金交付決定通知
都道府県労働局において、交付申請書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知を行う。

3.業務改善計画と賃金引上計画の実施

業務改善計画に基づき、設備投資等を行う。賃金引上計画に基づき、事業場内最低賃金の引上げを行う。

4.事業実績報告書の提出

業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号)を作成し、都道府県労働局に提出する。

5.助成金の額の確定通知

都道府県労働局において、事業実績報告書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金額を確定し、事業主に通知する。

6.助成金の支払い

助成金額の確定通知を受けた事業主は、支払請求書(様式第13号)を提出する。

この助成金は10月1日の最低賃金引上げ前に駆け込み的に申請が集中する点も特徴です。
上記を参照して検討してみてはいかがでしょうか。

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