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ハラスメント防止のために知っておかなければならないこと

昨日、私が所属する「東京都社会保険労務士会」主催の前期必須研修を受講しました。

今回は、「ハラスメント防止のために社会保険労務士が知っておかなければならないこと」というテーマでした。

 

講師はJILPTの方で、ハラスメントの現状、影響、背景・要因、企業の責任、法改正、ILO条約等が、わかりやすく詳細に解説され、最後に「企業はどう取り組むべきか」という論点で締めくくられました。

 


 

講義を聴講して、私の印象に残ったことは、職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントが起こる背景についてでした。

 

パワハラ発生の背景・原因と考えられるものは、以下のようなことが挙げられるとのことです。(多少、意訳しております)

 

会社の経営環境・職場環境の変化

□ 経済のグローバル化による競争の激化

□ 会社からの業績向上への圧力 → 過度の成果主義

□ 人員削減・人材不足 → 各人の業務量の過多、過重労働、ストレス

 

管理職の能力不足

□ 管理職自身も多忙、余裕がない → 部下への指導困難

□ 管理職に対する教育不足 → 管理職のマネジメント能力が低い

□ 職場内に、相談に乗ったり仲裁する人物がいない

 

コミュニケーション不足(職場の人間関係の希薄化・信頼関係の欠如)

□ 就労形態が多様化する反面、多様性への理解がない

□ 雇用管理の個別化・成果主義化 → 労働者同士の競争へ(失敗が許されない、失敗への許容度が低い)

□ 人権意識や個人の尊重の希薄化

□ 行為者の資質やハラスメント意識の欠如

□ コミュニケーション能力の低下

 


 

働き方改革の基本法として位置づけられている、労働施策総合推進法の改正により、2020年6月(中小企業は2022年4月)から職場におけるパワハラ防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。

雇用管理上必要な措置は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等に ついての指針」(=パワハラ指針)に定められています。

※この指針では、性的指向・性自認に関するハラスメント(LGBTハラスメント、SOGIハラスメント)もパワハラに該当するとされています。また、セクハラ指針やマタハラ指針も一部が改正されています。

 

雇用管理上講ずべき措置の実行を考えるとき、パワハラをはじめとする職場のいじめ・嫌がらせは、職場における表面的かつ個人的な現象ではなく、会社組織の構造的かつ全体的な問題の現れであることに留意すべきであると考えます。

 

そして、パワハラの防止は、上記の労働施策総合推進法第8章(第30条の2~第30条の8)にその根拠規定が置かれました。

労働施策総合推進法といえば、働き方改革の基本法となるものです。

 

働き方改革の目指すものとは、

●誰もが生きがいを持って、その能力を有効に発揮することができる社会

●多様な働き方を可能とし、自分の未来を自ら創ることができる社会

●意欲のある人々に多様なチャンスを生み出し、企業の生産性・収益の向上が図られる社会

です。

 

つまり、

「ハラスメントの防止のため雇用管理上講ずべき措置」を実行することは、「働きやすい職場環境の整備による労働生産性の向上」という企業における働き方改革の狙いとぴったり一致すのです。

 

このようなことからも小手先の対応で済むものでは決してなく、全体から検討していかなくてはならないといえるのです。

今こそ新型コロナウイルスによって負った会社のダメージを回復するためにも、考えてみませんか。当事務所もお手伝いします。

 

 

 

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