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天網恢恢疎にして漏らさず-厚生労働省「雇用調整助成金等の申請内容をより適正に確認します」

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、雇用調整助成金の特例措置を講じてきたところですが、令和4年6月30日まで延長することなどが決まりました。(2.26付コラム:令和4年4月以降の雇用調整助成金の特例措置等について

これを受け、厚生労働省の雇用調整助成金ホームページでは、次のリーフレットが発出されています。(令和4年3月22日公表)。

令和4年6月までの雇用調整助成金の特例措置等について
雇用調整助成金の支給を受けている事業主の方へ 対象期間の延長のお知らせ
雇用調整助成金等の申請内容をより適正に確認します

「雇用調整助成金等の申請内容をより適正に確認します」の内容

リーフレットによると、以下の3点を中心に4月以降の休業にかかる申請から適用するとあります。
1.業況特例における業況の確認を毎回(判定基礎期間(1ヶ月単位)ごと)行います。
2.最新の賃金総額(令和3年度の確定保険料)から平均賃金額を計算します。
3.休業対象労働者を確認できる書類および休業手当の支払いが確認できる書類の提出をお願いします。
  3については、以下で内容を確認します。

休業対象労働者を確認できる書類および休業手当の支払いが確認できる書類の提出が必要となります【適用】 令和4年4月1日以降に初日がある判定基礎期間の申請から適用

■提出が必要な確認書類(判定基礎期間ごとに必要となります)
①休業対象労働者全員の氏名、年齢および住所が確認できる以下のいずれかの書類の写し
住民票記載事項証明書(マイナンバーは不要)、運転免許証、マイナンバーカード表面、パスポート(住所記載欄があるもの)、在留カード、特別永住者証明書、障害者手帳、健康保険被保険者証(住所記載欄があるもの)※複数の書類の提出をお願いする場合もあります

②休業手当を含む給与の支払いが確認できる以下のAおよびBの書類の写し
A:源泉所得税の直近の納付を確認できる書類(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の領収日印があるものなど、納付を確認できる書類)
B:給与振込を確認できる書類(給与振込依頼書や給与支払いを確認できる通帳など。手渡し(現金払い)の労働者がいる場合は会社名・金額・氏名(労働者の直筆)・住所・電話番号・受領日を明記した領収証

■上記以外にも、必要に応じて以下の書類の提出を求める場合があります。
・国税および地方税にかかる各種納税証明書
・その他、労働局が審査を行う上で必要とした書類(給与支払事務所等の開設・移転・廃止届(個人事業主の場合「個人事業の開業・廃業等届出書」)、給与支払報告書、住民税額決定通知書、扶養控除等申告書、源泉徴収簿・源泉徴収票、総勘定元帳・仕分帳など)

緊急雇用安定助成金:
・労働者災害補償保険のみ適用
・判定基礎期間の初日において 雇用保険の適用が1年未満
雇用調整助成金:
判定基礎期間の初日において雇用保険の適用が1年未満

※対象事業主に該当しない事業主(雇用保険の適用が1年以上の事業主)については申請時に提出は求められませんが、審査段階で提出を求めることがあり、 事業所内に準備しておくよう指示が出されています。

結論:天網恢恢疎にして漏らさず
不正受給は会社や従業員に深刻な影響を及ぼします。どんな事情があろうと行ってはなりません!

厚生労働省では、これまでも不正受給への対応を強化・厳格化してきました。不正受給は令和3年末までに261件、32億円超に達していることの報道をご覧になった方もいることでしょう。また、不正受給のニュース等を見た従業員からの通報(情報提供)により発覚するケースも目立っています。
R3.12.9 雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します
R4.03.4 雇用調整助成金 不正受給の対応を厳格化します

今回の改正は、以下のような不正を防止するのが狙いと考えられます。
架空休業:実際には出勤(テレワーク含む)しているにも関わらず、休業したものとして休業日数や休業時間を“水増し”して申請
架空休業:出勤日にタイムカードを打刻しないよう従業員に指示する等により法定帳簿(出勤簿、賃金台帳など)を改竄・偽造して申請
架空雇用:退職した従業員を現在も雇用しているように装う、雇用関係のない者を雇用しているよう装い、休業したものとして申請
架空休業手当:実際には従業員に所要の休業手当を支払っていないが、支払ったことを装い申請

●不正受給が判明するとどうなるでしょうか?
返還を請求されます!
「不正発生日を含む判定基礎期間以降に受給した助成金の全額」、「不正受給した助成金の額の2割に相当する額」、「延滞金(不正受給
の日の翌日から納付の日まで年3分)」の合計額の返還を請求されます。
事案に応じて事業所名などが公
表されます
事業主の名称、代表者氏名、事業所の名称、所在地、不正受給金額、不正の内容 等
特に悪質な場合、刑事告訴等が行われます
さらに、雇用関係助成金の5年間の不支給措置が適用されます。

●適正な支給申請のために、以下の基本を守ることが重要です。
適切な労務管理
適正な支給申請の前提として、会社組織として、労働時間・休業時間の正確な把握など、適切な雇用管理を行う必要があります。これを怠っているにも関わらず、事実と異なる支給申請を行うことは不正と見なされることになります。
注意
コンサルタント等と称し、本来受給要件を満たさないにも関わらず、受給可能であるとして申請を勧誘する者の存在が報告されています。
「他の者が全ての書類を整えた(言いなりに申請しただけ)」としても、不正の対象は事業主となる場合がありますので、ご注意ください。
申請書類の保管
雇用調整助成金等を申請した事業主は、提出又は提示した書類の写し等について、支給決定日から起算して5年間保存する必要があります。


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