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人事院勧告(不妊治療のための休暇の新設について)

8月10日、人事院は、国家公務員の今年度のボーナスについて、新型コロナウイルスの影響が続く民間企業に合わせて、2年連続で引き下げを勧告しました。この人事院勧告の全容は、人事院ホームページから見ることができます。

ボーナスなど、給与に関する勧告・報告は報道等でよく目にするところと思いますが、それ以外にも、公務員人事管理に関して、以下のような報告がされています。 詳しくはこちら→別紙第3 公務員人事管理に関する報告

●公務員の人事管理における課題

●人材の確保及び育成等
志望者の減少、若手の離職、デジタル人材の不足

●妊娠・出産・育児等と仕事の両立支援
男性の育児休業取得の促進、不妊治療のための休暇の新設、非常勤への両立支援

●良好な勤務環境の整備
長時間労働の是正、柔軟な働き方(テレワーク、勤務館インターバル)と勤務時間制度、ハラスメント防止対策、心の健康づくりの推進

以上の通り、報告の内容は、民間企業の課題とすべて一致しています。今回は、不妊治療のための休暇の新設を以下に引用します。


(2) 不妊治療のための休暇の新設等
昨年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」において、不妊治療と仕事の両立のための職場環境整備を推進することが掲げられ、民間企業においては取組を促進するための各種施策が講じられている。また、不妊治療への保険適用拡大に向けた検討も進められている。こうした状況を踏まえれば、不妊治療を受けやすい職場環境の整備は社会全体の要請であり、公務においても不妊治療と仕事の両立を支援する必要性は高いと考えられることから、職員の不妊治療のための休暇(有給)を新たに設ける。休暇の期間は原則として1年につき5日、体外受精や顕微授精等の頻繁な通院が必要とされる治療を受ける場合は、更に5日を加えた範囲内とし、休暇の単位は、1日又は1時間とする。あわせて、管理職員を含む幅広い層の職員を対象として不妊治療に係る周知、啓発及び研修を行うことなどにより、不妊治療を受けやすい職場環境の整備を図っていく。


不妊治療自体は公的医療保険適用を目指しており、経済的負担のさらなる軽減が望まれるところですが、一方で、仕事との両立が課題となっています。例えば、体調によって通院日を急に変えたり、頻繁に通ったりする必要が生じるからです。また、気兼ねなく治療を続けてもらえるよう職場の理解も欠かせません。人事院が国家公務員に実施したアンケートでは、7割以上が「両立はかなり難しい」「無理だ」と回答しているとの報道もありました。

今回のような不妊治療のための休暇制度は、私の知る限りで民間企業での採用例はまだまだ少ないように思います。
この制度が機能するためには、
・休む人の仕事をどうカバーしていくか、人員配置や業務プロセスの見直しも必要となりますし、
・子供を産まないことを選択した人もいるなど、社員ひとりひとり多様な生き方が否定されない職場の雰囲気づくりも必要です。
・そもそも不妊治療自体、身体的・精神的な負担も大きく必ず成功することが約束されているわけではないことや、
・学生を卒業して入社まもない社員も使える制度であるかどうか、
・プライバシーは守られるのか
などなど、他方面にわたって検討しなくてはなりません。

厚生労働省のホームページでは不妊治療と仕事の両立のために情報提供がされています。
また、令和3年度から両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)も新設されています。
詳しくは以下からご覧ください。

厚生労働省:不妊治療と仕事の両立のために
両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)

 

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