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ざっくりつかむ「働き方改革」― ④「働き方改革」の全体像をおさえる

前回、働き方改革関連法案の成立の経緯を振り返りました。

今回は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年7月6日公布)から、働き方改革の全体像をみてみたいと思います。働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(概要)_平成30年7月6日公布

 

Ⅰ 働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法の改正・改称)

雇用対策法が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と改称されます。労働者は、職務及び職務に必要な能力等の内容が明らかにされ、これらに即した公正な評価及び処遇その他の措置が効果的に実施されることによ り、職業の安定が図られるように配慮されるものとすることを加えるとされています。

 

Ⅱ  長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等

1 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法の改正)

(1)長時間労働の是正

① 時間外労働の上限規制の導入

時間外労働の上限について、月45時間年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間単月100時間未満 (休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定されます。

 

② 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し (継続審議となっていた平成27年の法案と同内容)

月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置が廃止されます。

(平成35年4月1日施行)

 

③ 一定日数の年次有給休暇の確実な取得(平成27年法案と同内容)

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととされます。(なお、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません)

 

④ 労働時間の状況の把握の実効性確保

労働時間の状況を省令で定める方法(※)により把握しなければならないこととされます。(労働安全衛生法の改正)

 

 

(2)多様で柔軟な働き方の実現

① フレックスタイム制の見直し(平成27年法案と同内容)

フレックスタイム制の「清算期間」の上限が1か月から3か月に延長されます。

 

② 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

・職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事す る場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、 労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が適用除外とされます。

 

・健康確保措置として、年間104日の休日確保措置が義務化されます。加えて、①インターバル措置、②1月又は3月の在社時間等の上限措置、 ③2週間連続の休日確保措置、④臨時の健康診断のいずれかの措置の実施が義務化されます(選択的措置)。

 

・制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととされます。(※労働安全衛生法の改正)

 

・対象労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とする。

 

 

2 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法の改正)

・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととされます。

 

・企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会 の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとされます。

 

3 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法の改正)

・事業者は、衛生委員会に対し、産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならないこととされます。 (産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場) 等

 

・事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないこととされます。(産業医の選任義務 のある労働者数50人以上の事業場) 等

 

 

Ⅲ 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法の改正・改称、労働契約法の改正、労働者派遣法の改正)

短時間・有期雇用労働者に関する同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、 当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されます。

(有期雇用労働者を法の対象に含めることに伴い、パートタイム労働法は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と改称されます)

 

有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の確保が義務化されます。

派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と 同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務化されます。

 

 

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働者派遣法の改正)

短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明が義務化されます。

 

3.行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRが整備されます。

 

以上、全体像としても相当なボリュームです。

次回は、何から行えばいいか考えてみたいと思います。

 

 

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