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雇用類似の働き方を考える(労働相談の現場から)

働き方改革にスポットがあたる一方、「雇用類似の働き方」についても保護されるべきものとして見直されようとしています。

 

「雇用類似」という言葉の通り、難しい論点なのですが、主に“フリーランス”“個人請負”“在宅テレワーカー”“クラウドワーカー(不特定多数の発注者と受注者を募りネット上で仲介するサービス「クラウドソーシング」を用いて仕事をしている方々)としてくくられる方々を指し、

最近ですと、「ウーバーイーツ」(レストランの料理をスマートフォンで注文し、登録した一般の人が配達員としてデリバリーするサービス)で働く方々に労災保険が適用されないなどの問題が、この論点を踏まえて語られました。

 

これらの方々は雇用されて働いているのではないため、労働基準法の労働者に該当せず、原則として労働基準法をはじめ、労働安全衛生法、労災保険法、雇用保険法などの労働関係諸法令は適用されず、健康保険ではなく国民健康保険、厚生年金ではなく国民年金に加入することとなります。

 

端的にいうと、働き方の多様化により「労働者」に近い働き方をする「個人事業主・自営業者」が現れ、それに端を発するトラブルも増えてきているということです。

 

この「雇用類似の働き方」については、労働政策審議会の基本部会というところで検討されているテーマで、以下のサイトが参考となります。

 

第17回労働政策審議会労働政策基本部会

 

 

ところで以前から、

実態は「雇用契約・労働契約」でありながら、契約書のタイトルを「業務委託契約・業務請負契約」として、「労働法令逃れ」をしていることについて、受託者の方(=本来なら労働者となるであろう方)からたびたび相談を受けることがありました。

 

働き方改革に伴う各種労働法令の改正に前後して、時間外労働の削減、年次有給休暇の年5日取得が義務化、最低賃金の急上昇などから、もはや労働者として雇うことができなくなってしまった事業者がこれに目をつけ、“働く人の無知につけ込み悪用している”というものです。

 

契約書を確認したところ、働く時間に比例して請負料金が払われており(1時間あたり最低賃金の半額!)、しかも1日12時間近く店舗に拘束されるというようなものもありました。また、業務内容は変えずに、雇用契約から業務委託契約に変更すると会社から一方的に言われたというようなご相談もありました。

 

相談に訪れた方々も「雇われてい働いている」こと、「業務を請け負って働いている」こと、両者の違いをあまり意識していないように思われます。

 

●「雇用契約・労働契約」:他人の指揮の下で働き、それによって賃金を得る契約

●「業務委託契約・業務請負契約」:他人の指揮を受けず、発注者と対等の立場のもと取引条件を決定し、請負の対象となるものを納品したり、委託された業務を実施すること。

 

契約書のタイトルが「業務委託契約・業務請負契約」であっても、実態が「雇用契約・労働契約」に該当すれば、受託者でも労働者として労働法令に守られ、発注者は使用者として労働法令違反を問われることとなります。

ところが、労働基準監督官が事実関係を確認し、是正勧告等が発するにも、それなりに時間がかかると思われます。

 

従って、採用の際は自分が結ぶ契約を書面としてもらうことは言うまでもありませんが、その契約がどのようなものなのか、どのように記載されているのか、必ず確認するようにして下さい。

わからないことがあったら、お気軽に当事務所までご相談下さい。

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